自然盆栽とは


 はじめに
 植物は移動できません。そのため、与えられた環境の中で生き延びるほかありません。生き延びるために、光に向かって枝を伸ばし、水分を求めて根を張り、時期が来れば花を咲かせ種を散布します。時には枝が折れたり、風で根本からなぎ倒されることもあります。虫や強すぎる日照で枝が枯れることもあります。このような攪乱に遭っても、新たなシュートを伸長させて適応します。この営みが木質部として蓄積され、樹木は形作られていきます。樹形には樹木の生きてきたドラマが詰まっているのです。
 樹種により枝の分岐パターンは異なります。このため、樹種ごとに樹形が異なります。遠くにある樹木でも、その樹形からおおよそ樹種を見分けられる場合もあります。それほどに樹形は樹種を象徴するものなのです。

 自然盆栽とは何か
 先述のように、樹木にはそれぞれ異なる樹形があります。これをいかに鉢の中に再現し、自然界にある木よりも ”らしさ” を引き出そうとするのが自然盆栽です。鉢の中に自然樹形を再現するといっても、人間が枝を切ったり針金で捻じ曲げたりしません。樹が勝手にその樹種らしい樹形に出来上がってくるのを助けるのです。整姿に関して人間にできることは、勢いの強い枝は葉をむしるなどして抑制し、弱い枝は引き上げて力をつける程度です。